■ 温水配管モルタル蓄熱式床暖房システムとは?
床下に温水の流れるポリブデン(プラスチック)管を床暖房したい場所に配置します。その配管をモルタル(厚さ8cm程度)で埋めます。使用時は、配管にお湯が通り、モルタルを暖めます。やがてモルタルが、全体に温まり飽和状態になり、空気を暖めるのではなく、人体に最も吸収のよい遠赤外線(低温輻射熱)で直接人体を暖めます。これが輻射型というもので、蓄熱式床暖房のすばらしいところです。熱源が感じられなく、陽だまりのような、気持ちのいい暖かさとなります。低燃費で建物全体を暖めることができ、お年寄りに危険なヒートショックを作りません。安全、快適、省エネな暖房システムといえます。
つづく
■ メリットとデメリット
メリット(長所)
● 暖める範囲が大きいほど、施工費と燃費が他方式に比べ安くできます。
● 結露の起きにくい環境を作り出し、自然から暖房効果を得ることで(ダイレクトゲイン)日中の太陽光が床に蓄熱され省エネになります。
● パネルではないので大きさに左右されず、洗面所や浴室など空間の隅々まで自由な設計が可能、そのためヒートショックをさけられます。
● 接続するボイラーはガス、灯油、電気のどれでも選択できます。将来的にヒートポンプの開発が進めば、施工されたシステムはそのままで、ボイラーをかえるだけで夏の蓄冷房も夢ではありません。
デメリット(短所)
● 特殊な施工なので、熟練した技術と設計が必要。経験と知識がトラブルを回避します。
● 使用する床材料の特性を十分把握しないとトラブルになります。対応できる床材料の選択に限りがあります。
● 温まリ始めるのに時間がかかり、急激な温度変化や部分暖房は苦手。
上の図面は床暖房の配管を示しています。
色分け(3色)の範囲に系統を分けます。それぞれが配管120m以下に抑えられています。渦巻きのようなものが、配管経路です。一度モルタルに蓄熱させてから、飽和状態になって輻射熱で床、建物を暖めますので、床面にむらが出ません。
また、設計で重要なのは、配管の循環経路です。120mの中で行きと帰りでは配管を通るお湯の温度が違います。行きと帰りの配管が偏らないように設計するのがポイントです。この家の場合は、個室+トイレの一系統(緑色)とその他(ピンクとオレンジ)が別々にサーモ付タイマーで制御されています。
計画時点で、予算と生活スタイルを考慮して、床暖房範囲を決めていきます。ポリブデン管は120メートルのつなぎ目無しで、一筆書きのように計画します。つなぎをとらない事でトラブルを回避しています。120メートルでおよそ15畳ほどをカバーします。それ以上大きな空間は系統を分けます。面積が増えるほど割安になります。およその目安として3系統50畳(25坪)120万円ほどで、標準的な家の1階のすべて(居室は基より水廻りから玄関まで)を床暖房することができます。
■ 蓄熱式床暖房の施工手順
※ポリブデン管を系統ごとに一筆書きで敷き詰めていきます。
※時間をおかないで翌日にモルタル(蓄熱層)で配管を埋めていきます。配管を傷つけないために段取りが重要です。
※配管の太さが一般既製品とは違うのでヘッダーを専用に制作します。
蓄熱式温水床暖房の設計から施工手順を、設計者自邸の例をあげて詳しくブログに書かれていますので、興味のある方はこちらも見てください。
建築家自邸物語、床暖房編