上棟式(建前)のこと教えて

上棟式(じょうとうしき)とは、新築の際に行われる神道の祭祀である。棟上げ(むねあげ)、建前(たてまえ)ともいう。 建物が無事であるよう願って行われるもので、通常、柱・棟・梁などの骨組みが完成した状態で行われる。 祭祀ではあるが、住宅の場合、一般的には神主を呼ばず、棟梁が中心となって儀式を執り行う。 施主は工事の無事と、職人へのねぎらいを伝える貴重な場として、儀式後、直会(なおらい)という宴会を催すのが通例です。

つづく

■上棟式をやらなくてもいいのか

「ハイ」です、やらなくてもいいです。やるやらないは、施主が判断するもので、地域の慣習やしきたりに囚われることはありません。やらないと手抜きされそうと心配する方もいらっしゃいますが、職人はプロですからそれはありません。では、上棟式をやらないかというと、私の建主はやるほうが多いです。なぜかというと、施主が職人と接し感謝を伝える数少ない機会だからです。 施主挨拶やご家族の紹介も職人との交流です。上棟式は「施主はもてなす側」です。職人も人の子です、施主に感謝されてうれしくない人はいません。感謝を伝えたいと思うなら、簡単でもいいからやったほうが良いと説明しています。

■まずはどうすればいいか

施工者と日時を決めます。休日の大安などを決めても、工程がうまくいかない場合もありますので、休日を優先するか、吉日を優先するか、柔軟に考えた方がいいでしょう。日で気をつけなければならないのは、「三隣亡(さんりんぼう)」。 言葉のとおり、近隣三軒が亡ぶほどの災いがある日のことで、着工・上棟などは通常避けます。迷信だともいわれていますが、本人は気にしなくても、ご近所が気にする場合もあります。 日が決まったら、上棟式の規模を考えます。ご両親、親戚、近所の方々、声をかける人数が増えるほど、規模は大きくなります。また、最近はあまり見かけませんが、投げ餅をするときは、準備も費用もかかりますから、早めに決断しましょう。

■当日が雨だったら

雨でもやります。よっぽどの台風直撃で危険な状態でなければ、予定通り進めます。当日雨予報なら、前倒しで工事を進めておいて、当日は儀式のみの場合もあります。 吉日を希望することが多いので、上棟をずらすと予備日も難しく、工事も大幅に遅れるので大抵は強行します。天気だけはそれこそ神頼みです。

※こちらは本格的な儀式ですが、今は簡単に行うことの方が多いです。


■出席者
 施主と家族、ご両親、施工業者、設計士(小規模)+ご親戚、ご来賓(中規模)+ご近所、友人(大規模)
■上棟式のお供え物
米(皿山盛り、前日に洗っておく) 神酒(1升) 塩(皿1杯)神酒の盃(茶碗等)人数分

以下(地方によってはまったく用意しない場合もある)
尾頭付き海魚(金目鯛、鯛等)魚屋に前もって注文しておく事
海の幸3種(スルメ、コンブ、ワカメ等)
野菜3種(大根、人参、なす、きゅうり、キャベツ等)
果実3種(りんご、みかん、バナナ等)

■祝儀
施主の裁量で決めることなのですが、過去の経験としては、職人一律1万円、棟梁のみ3万円くらい。 金額は施主が一番悩むところですが、恥ずかしがらず、設計者や工務店に相談すれば、出席人数も調整してくれることでしょう。

■上棟式当日の手順
①午前10時にお茶をだす。
②12時に昼食をだす。人数分のお弁当、お茶、味噌汁など用意

●上棟の儀は最上階もしくは屋根に登る(男のみ奇数人数)
③午後3時頃上棟の儀(開始時間は季節や工事進捗状況でかわる)
④棟梁が幣束(ヘイソク、最近では上棟セットと呼ばれる)とお供え物のある祭壇にお払いをする。
⑤施主から順番に祭壇に向かって二礼二拍手。
⑥建物の四方に酒・塩・米をまいて清める。
⑦上棟の儀の後、祭壇の前で乾杯。
⑧建物の四方に向かって、投げ餅をする。(行う場合)

●1階に下りて直会(宴会)
⑨施主のあいさつ、乾杯、職人さんの紹介など
⑩施主から職人へご祝儀を渡す。
⑪お開き、手締め。

■直会(なおらい)の準備

出席者の人数を確認して、食事の量を決める。昨今は1時間以内で終わることも多いので、たくさん用意しなくても十分である。寿司(大皿で良い)オードブル、つまみ(乾き物)など、 ビール、お酒(当日、上棟祝いでもらうことがあるので、用意しなくてもいい)ウーロン茶、ジュース。 飲酒運転が厳しい昨今は、お酒を出す場合、乗り合いか代行など、職人には十分に注意してもらう必要がある。

■引き出物の中身
お祝いなので、結婚式と同じイメージで、金額はそれほどかけません。
■祝いのお酒(小瓶)酒屋に上棟用として売ってます。350円くらい
■おもち(奇数個)か紅白饅頭のようなお祝いもの
■お赤飯+鯛の折り詰もしくはお弁当
■手土産 のり、お茶、鰹節、お菓子、タオル等1000円くらい
一人当たりの金額を決めて、工夫してみてください。

※直会は雨でもなるべく現地で行います。最近は当日ではなくて別の日に棟梁や現場監督など少人数で行う事もあります。

※過去の経験をまとめてみましたが、上棟式の内容はかなり地方によって違いますので、地元の工務店によく相談して行ってください。


■上棟こぼれ話(本音と建前)
昔、有名な棟梁がいました。その棟梁が明日、建前と言う前の晩になって、 玄関の柱を短く刻んでしまい、収まらなくなってしまいました。 棟梁は、己の未熟さに死のうと考えたが、それを見た棟梁の奥さんが、自分が代わりに死んでも良いとまで思い、 棟梁に酒を飲ませて寝かしつけ、寝ないで考えたのが、マス組と言う工法でした。 翌朝目覚めた棟梁は、奥さんの差し出した枡を受け取ると、「わかった!」と言い、 柱の足りない分を、補って納めたのです。 ところが、己の恥が表に出るのを恐れた棟梁は、口封じのために奥さんを殺してしまいました。 殺してから棟梁は、己の犯した罪を悔い、未来永劫、弔うと心に誓い 女の七つ道具を棟の上に飾って供養したと言うのが始まりで、建前の儀式となったそうです。 「タテマエ」にこだわるあまり妻を殺してしまった男の生きざまに、 「ホンネ」で応じた女の悲話が「本音と建前」の語源となったと言われています。


筆者自らが施主として経験した上棟式の様子をブログで紹介しています。
「建築家自邸物語」地鎮祭・上棟式編

2020年10月10日