蓄熱式床暖房にこだわるわけ

床暖房が欲しいというと、温水式か電気式のどちらにしますか?と聞かれると思います。OMソーラーなどパッシブソーラーという考えもあります。電気は手軽に施工できるけど、電気代が心配だなあと言うのが一般的な知識だと思います。こうした熱源の選択に隠されて、もっと重要な事が忘れられています。それが蓄熱型なのか直接型なのかということです。

つづく

■ 蓄熱型と直接型 

一般に言われている多くの床暖房は、木質の床材と下地の間に温水菅または電気シートを挟んだ直接型の方法です。蓄熱容量の小さい床板では、ヒーターの周りは熱くなりますが、少し離れると冷たく感じます。そしてヒーターを切るとすぐに冷えてしまいます。電気カーペットとたいして変わりありません。蓄熱型とはいったん床下のモルタルや基礎に熱を蓄えさせてから、熱が飽和状態になったところで、輻射熱として床に伝わります。正確にいうと床を暖めるのが目的ではなく、家自体を暖めることが目的です。温まるのに時間がかかりますが、床面の熱むらは少なくなります。熱源を切ってもすぐに冷めることもなく、タイマーで熱源の管理をすれば、冬の間一定の温度を保つことが可能です。床暖房を局所的に考えるより、全館暖房する発想が蓄熱型です。

■ 全館暖房 

全館暖房と聞くと高いんだろうと思われますが、それはメーカーのパネル一体型の床暖システムを使おうと思うからです。メーカー品は安くありません。一部の部屋に使用する程度の面積に適しています。全館暖房しようとしたら高くつきます。蓄熱型床暖房を実現するには、設計段階から計画し、基礎工事、床仕様を考え、市販の配管材料とボイラーの組み合わせを考えることで、ローコストで品質の高い床暖房が可能になります。ボイラーの熱源は灯油でも、ガスでも、電気(ヒートポンプ)でもいいのです。

■ 床暖房の本当のねらい (本当に欲しいのは水廻り)

床暖房の本来の目的は、熱源が感じられない自然な暖かさで、部屋と部屋の温度差がない空間を作ることです。居間だけを暖め、廊下やトイレに行ったら急に寒くなり、お年寄りを危険にさらすのが、今までの住宅暖房でした。これをヒートショックと言います。家全体を暖め温度差をなくし、しかも燃費のよい暖房方法が蓄熱式床暖房なのです。この方法は、結露を起きにくくします。また、蓄熱の部分をモルタルにすることで、太陽光をもっとも有効に使う、ダイレクトゲインが可能です。全館暖房なら吹き抜けで寒いということもなく、プランを考える上でも選択の巾が広がります。モルタル下地の場合、夏には逆にひんやりした床になり、夏の省エネにも貢献します。施工技術や設計計画が面倒なために、敬遠されていますが、住む人にやさしいこの床暖房システムをこだわり続け、研究し提案させてもらっています。


※浴室と洗面脱衣室に同じタイルを使用できて冬でもタイル床が寒くありません。

※洗面脱衣室とその先の浴室洗い場まで配管する。

■ 蓄熱式床暖房の施工手順

蓄熱式温水床暖房の設計から施工手順を、設計者自邸の例をあげて詳しくブログに書かれていますので、興味のある方はこちらも見てください。

建築家自邸物語、床暖房編

2020年10月05日