横浜の家01(自邸)/四季を感じながら住む家

  • 所 在 地 :神奈川県横浜市
  • 竣  工:2012年3月
  • 構  造:木造SE構法 地上2階建て+ロフト
  • 延床面積:92.80㎡ (28.07坪)ロフト含む
  • 敷地面積:120.97㎡(36.59坪)
  • 備  考:耐震等級3 長期優良住宅 フラット35S 蓄熱式温水床暖房 太陽熱温水システム

 

日本の四季を楽しむ 一本のもみじ

敷地は正方形に近い36坪の平坦な土地。地区一体がほぼ同じ大きさの敷地サイズで、違いは道路の位置関係くらいなので似たような住宅が立ち並んでいます。敷地に特徴が無い中で、さりげなく個性を出そうと考えました。

南にアパート3階建があり、南に庭を設けても覗かれる心配から窓を開放的にできない。そこでアパートからの視線を遮りながら太陽光を取り入れる形として、中庭を囲むコの字型プランに落ち着いた。

この中庭案が登場した時点で、地元の富士山の造園業者(造園屋の所有地)の山で自然に成長しているもみじを見て回った。その中から、この中庭にあう形を見つけ出し、紅葉の様子を確認して住宅完成後に移植した。その甲斐あって、春の新緑、夏の木漏れ日、秋の紅葉、冬の枝振り、晴れの日も雨の日も毎日の微妙な変化に気づく暮らしができている。

道路から一歩下がったプランでは、街にひらいた10坪の庭があり、つる薔薇や四季折々の花々が道行く人の楽しみとなっている。他人に見てもらう事は予想以上に手入れのやりがいとなっている。

建築は決して主張せず、自然が主役となり住む人や道ゆく人を楽しませてくれるこの家は、私の目指す有機的建築に一歩近づけたかなと感じている。

また低燃費住宅として蓄熱式温水床暖房で全館暖房を試み、太陽熱温水システムで風呂のお湯を作り大きな扉で強烈な西日を遮り、エネルギーの消費を極力抑えながらも快適な住まいに仕上げています。

 

太陽の動きを 感じながら暮らす

太陽の角度は夏と冬で違うことは当然のことですが、夏至78°と冬至32°の最大差が46°(東京)もあることは、数字で確認すると改めて驚きます。これほどの角度差があるので、庇(軒の出)はたいへん有効なのです。

敷地は約11mの正方形です。その中に幅3.4mの中庭を設けたので、各部屋の幅は3mになりました。4畳半が幅2.7mなのでかなり狭いです。南に庭を取れば、同じ面積でも室内幅6m確保できます。狭い敷地にわざわざ中庭を設けて、狭い部屋を作るなんて考えられない!と言うのが普通です。そうまでして何がメリットなのでしょうか?

ひとことで言えば、空間が豊かになります。それは部屋が小さく、ほとんどが外に面しているのでたっぷりと部屋の隅々まで入る太陽光と短い風の道のおかげです。空間が小さければ冷暖房のエネルギーも少なくて済みます。そこに自然樹を植えれば、中庭が主役になります。中庭に落ちる木漏れ日は一日の動き、季節による高度変化と、毎日ちょとずつ変わって行きます。大げさに言えば、地球と共に生きているという感じがします。

この空間を訪れた人は大抵思ったより広いと言います。それは中庭を通して10mが見通せるからです。敷地一杯に近い距離です。お日さまと共に暮らす気持ちのいい空間は、心を穏やかにしてくれる事でしょう。

2020年10月01日